聖書の言葉515
「そんな人は知らない」(マルコ26・74)
最後の晩餐の席で、イエスさまが弟子たちに言いました。「おまえたちは私を裏切る」。ペトロはびっくりして、「たとえご一緒に死なねばならなくなっても、イエスさまのことを知らないなどとは決して申しません」。弟子たちも同じように言いました。しかし、裏切り者のユダに先導された大勢の人たちが、ゲッセマネでイエスさまを逮捕すると、弟子たちは逃げ出してしまいました。恐かったからです。
夜中大祭司カイアファの屋敷で裁判が行われました。ペトロはイエスさまがどうなるか心配で、恐かったけれど大祭司の庭に潜り込みました。とても寒い夜のため、庭では火がたかれていました。そこで働いていた人たちは、裁判のことを気にしながら火にあたっていました。ペトロもこっそり火にあたりました。炎の明るさで皆の顔が分かりました。
一人がペトロに向かって「ガリラヤのイエスの仲間だ」と言いました。ペトロは「何も分からない」と言って、門の方へ遠ざかりました。またもう一人が「この人はナザレのイエスと一緒にいた」と言いました。また「そんな人は知らない」とペトロは強く言いました。そこにいた人たちがペトロの周りに集まって来ました。「お前もあの連中の仲間だ。ガリラヤなまりがその証拠だ」。ペトロは追い詰められました。恐くて恐くて「そんな人は知らない」と神さまに誓って言ってしまいました。
夜明けを知らせる鶏の鳴き声が響きわたりました。ペトロの姿がはっきりと照らしだされました。「鶏が鳴く前に、あなたは3度、私を知らないと言うだろう」と言ったイエスさまの言葉をペトロは思い出し、外に飛び出して、激しく泣きました。自分こそ本当の裏切り者、罪人だったからです。こんなに恐ろしいこと、悲しいことがあるでしょうか。(岸 俊彦)

